1. 構想・ラフ

準備

今回使うツールは以下の通りです。
  • ◇ペンタブレット(Intuos pen small)
  • ◇ペイントソフト(CLIP STUDIO PAINT PRO)
  • ◇A4紙
  • ◇5㎜シャーペン
  • ◇スキャナ

ペンタブレットとは、ペンでパソコン画面の操作を行う機械です。パソコン上で絵を描くにあたっては非常に大切なツールとなります。
ペイントソフトはクリップスタジオを使っています。この他にも様々なソフトが売られていますが、このソフトは値段の割に高機能なので重宝しています。ペイントソフトは有料の製品だけでなく、無料のものもあります。
基本はパソコン上で絵を描きますが、今回は一部アナログで作業するため紙とペンも用意しました。

構想

絵を描くにあたって、1番最初にすることはどんな絵を描くか考えることです。 完成までのモチベーションを保つために、自分の好きなものを選ぶとよいと思います。 私は海外の風景や建築が好きなので、旅行中に撮った写真を見返し、そこから描きたい絵のイメージを固めるようにしています。今回は、カナダ旅行中に撮ったケベックシティとクリフトンヒルの風景を参考にすることにしました。ケベックシティはカナダ有数の観光地で、北米最古の繁華街と呼ばれるプチ・シャンプラン通りがあり、おとぎ話に出てきそうな可愛いお店が数多く並んでいます。クリフトンヒルはナイアガラの滝のすぐそばにある街で、昔のアメリカのようなレトロな雰囲気が素敵な場所です。これらの写真から、海外の街・可愛らしいお店・レトロなネオンサインを絵のモチーフに決定しました。

ケベックシティの街並み1
ケベックシティの街並み2
クリフトンヒルの景色

イメージラフ

それでは実際に絵を描く作業に入ります。
まずクリップスタジオを立ち上げ、A4サイズの横長のキャンバスを作成します。
濃い鉛筆ツールを選択し、イメージを大雑把に描いてみます。

ラフ1

現時点ではぐちゃぐちゃですが、このイメージラフによって手前に人物がいて、人物の近くに建物があり、左側にお店が並び、一番奥に大きな建物がある…という構図が定まりました。 今回は一発で全体像が定まりましたが、イメージラフがしっくりこないときは何度も描き直していい構図を模索していくといいと思います。特に背景付きイラストの場合、描く要素が多い分いい絵にするためには全体のバランスが重要になってきます。構想の段階に力を入れることが大切です。

ラフ2_PC画面

「レイヤー」→「パース定規の作成」を選択し、水平線や消失点を設定します。今回は二点透視法を採用しました。これを設定したうえで、「特殊定規にスナップ」をオンにすることでパースに合わせた線が引けるようになります。

パースについて

1度は聞いたことがあるかもしれませんが、パースとは日本語で「遠近法」を意味する表現手法です。これによって立体感や奥行きの表現が可能となるため、背景を描くうえで非常に重要な概念です。
パースについて詳しく知りたい方は、以下のサイトに詳しくまとめられていますので是非ご覧ください。


ラフ3

これが出来上がったラフになります。左側の建物群と奥の建物との距離感を演出するために木を追加し、奥の建物の形状も変更しました。一番手前の建物はアイスクリーム屋さんにし、そのネオンサインを描きました。左側の建物はまだ決めていないので、ネオンサインの形も仮置きとなっています。
構図を確定させるにあたり、意識したことが2つあります。
1つ目は黄金比です。これは画面を縦横に3分割し、縦と横の線が交差する地点にポイントとなるモチーフを配置するとバランスが良く見えるというものです。この絵でも人物の頭、奥の建物の屋上のオブジェ大きな看板という3つの目立ちやすいモチーフをこれらのポイントに配置し、全体のバランスが良くなるようにしました。
2つ目は見る人の視線です。絵を見たとき、最初に目が行くのはキャラクターの顔だと一般的に言われています。この絵では人物の視線を奥の建物上部に向け、人物の頭→アイスクリームのネオンサイン→奥の建物の屋上にあるオブジェ→左側の建物のネオンサイン→奥の建物の看板という風に、無理なく見る人の視線を誘導し、画面全体を見てもらえるように工夫しました。

ラフ4
ラフ5

色置き

下書きに入る前に自分の中の完成イメージをより明確にするため、色を大雑把に置いていきます。

色置き6

主要な部分に固有色を置きました。夕暮れ~日没寸前の、真っ暗ではないけれど明かりが点いている時間帯を想定しているため、窓の中が明るいという設定です。

色置き7
色置き8

時間帯を演出するために鮮やかな紫色を薄く載せると、このようになりました。更に加算(発光)レイヤーで光を乗せます。

色置き9

完成イメージが固まりました。それでは下書き・線画に移ります。